アジアからの外国人観光客が日本で期待する観光地として「日本的な街並み」が2位に

日本政策投資銀行が平成25年に実施した「アジア8地域の訪日外国人意向調査」によると、行ってみたい日本の観光地として「温泉」の次に「日本的な街並み」が2位にランクインしていました。

これは、外国人にとってテーマパーク(10位)や寺社仏閣(11位)、高層ビルなど都市景観(20位)よりも、いわゆる田園地帯や町屋など日本の原風景への人気・憧れが高いことが分かります。

アジアでも大ヒットした日本アニメ「君の名は」で知られる新海誠監督作品が人気の理由に、この「日本的な街並み」をあらわす建物や風景が多く描かれていることも理由の一つだとか。

そんな日本人には当たり前すぎて、目にとまらない日本の魅力として「古民家」への関心も徐々に高まってきているようです。

では、「古民家」とインバウンドをめぐる動きはどのようなものがあるのでしょうか?

古民家をモダンな宿泊施設に蘇えらせる

アメリカ人で東洋文化研究者のアレックス・カー氏は、1971年、徳島県で築300年の藁葺き屋根の古民家に魅せられ、自らの手で修繕して住み始めたことをきっかけに、日本の各地域で古民家の修復再生や、景観コンサルタントを行っています。

NPO Chiiori Trust stay

http://www.chiiori.org/index.html

彼がリノベーションした宿泊施設は古民家の良さを活かしながら、モダンな一棟貸切タイプのゲストハウスとなっており、その土地ならではの体験プログラムを揃えていることを大きな特長としています。

外国人旅行者は伝統家屋に生活しながら、地方の暮らしや文化を体験できるとあって、ホテルや旅館とはまた違った魅力を感じられることでしょう。

古民家をカフェやコミュニティの場として活用する

また、古民家をゲストハウスとしてだけでなく、外国人旅行者と地域住民が気軽に集まれるコミュニティスペースとしてカフェやバーなどを併設するケースもあります。

古民家の宿に高まる外国人の関心、 人気の古民家宿のストーリーとは? 前編 やまとごころ.jpそこでは、その土地でしか体験できないプログラムまで提供しているケースもあり、単なる宿泊施設にとどまらない試みも始まっています。

政府や企業も古民家に注目

東京オリンピック開催を追い風に訪日外国人の急増が予想されることから、その宿泊施設として政府や企業も古民家に注目しています。

日本政府観光局(JNTO)は、古民家を活用した地方への外国人旅行者の誘客へ向けた情報発信と情報収集に取り組むと発表。

⇒「日本政府観光局(JNTO)と株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)との 古民家等の歴史的資源を活用した外国人旅行者の地方誘客促進に向けた連携協定について 」

下着メーカーのワコールは京都の町屋を活用した宿泊事業への参入を計画。2018年春より2~3店舗の開業を予定しており、さらに5年後には50店舗まで拡大させ、さらに京都府下および他府県への展開も視野にいれているそう。

「京町家を活用した宿泊事業への参入について」

また、千葉県内の金融機関や信用保証協会では、古民家を活用したビジネスの後押しに乗り出している。

千葉銀行は古民家を使った事業に特化した融資制度を導入したほか、千葉県信用保証協会は古民家専門の保証制度を取り入れ、いずれも全国初の試みとのこと。

・・・と、このように、古民家を取り巻くインバウンドの動きが、ざっと見ただけでもこれだけ見られました。

私たち日本人が「古い」=「いらないもの」と安易に廃棄してきた古い家屋が、私たちの知らないところでその魅力が再発見され、新しい付加価値をつけて蘇ろうとしています。