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“滞在して楽しむ”観光案内所 奈良県猿沢イン-Nara Visitor Center & Inn
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日帰り観光からの脱却 宿泊客の増加を狙う

160705-0003 平成27年の全国外国人宿泊者数が前年比+48・1%(6637万人泊)を記録するなど、大きく発展している日本のインバウンド市場(観光庁・宿泊旅行統計調査速報値より)。奈良県は東大寺や法隆寺など、国宝建造物全国ナンバーワン(64件)を誇る一方で、宿泊客数や客室数で「全国ワースト」の汚名に泣かされてきました。しかしさまざまな試みにより、近年宿泊客は増加傾向に転じています。その試みの一つが、外国人観光客へのサービス充実を図るため開館した『奈良県猿沢イン-Nara Visitor Center & Inn-』(以下『奈良県猿沢イン』)です。  


『奈良県猿沢イン』は平成25年に廃止となった地方職員共済組合奈良宿泊所『猿沢荘』の一部を改装し、平成27年の7月に開業。観光案内業務やサロン管理業務を株式会社JTB西日本が受託し、現場運営をグループ会社の株式会社Jプロデュースが担っています。  英語、中国語、韓国語での観光案内が常時可能な体制を整え、日本政府観光局(JNTO)の外国人案内所カテゴリーⅢの認定を取得しました。

 当初はハードを整え、SNSで情報発信をすれば自然と外国人観光客に認知されるという見通しでした。しかし実際は試行錯誤の連続だったとオープン準備から現場業務に携わった株式会社Jプロデュースの橋口洋尚さんは振り返ります。現場の実情を橋口さんにお伺いしました。

駅前案内所との差別化 文化体験を日替わりで

160705-0007 『奈良県猿沢イン』の開館時間は、朝8時から夜21時まで。近隣の観光施設や商店より長く開いています。

 それは『ここに来れば宿泊場所が見 つかる』と認知してもらうため。 「さらに不定期ですが、朝早くに出発し平城京跡などを巡る無料半日バスツアーを実施しています。利用するには市内に泊まる必要があり、やはりこれも奈良を長く楽しんでもらうための仕掛けの一つです」

 『奈良県猿沢イン』は世界遺産・興福寺の五重塔を眼前に望み、お土産・飲食店が軒を連ねる「ならまち」の近く。駅からは徒歩10分と少し離れ、駅周辺には公営・民営の観光案内所が集まっています。 「『奈良県猿沢イン』は、駅から離れた後発の観光施設。『いわゆる案内所』ではなく、日本の文化体験を毎日提供する施設として企画されました」


160705-0005 施設入口には今月の開催イベントを告知するボードが設置されており、この日は県産フルーツの試食体験日。そのほかの日では琴のコンサート、書道・お茶体験、着物体験などを日替わりで催し、飛び込み客も歓迎しています。 「オープンから約10カ月、これまでさまざまなイベントを実施してきました。例えば、完成品を後日ご自宅まで郵送する『紙すき体験』や、奈良時代の『天平衣装体験』など。中には季節的に復活するものもあるのですが、集客効率や費用対効果を勘案し、現在の日替わりイベントに絞り込みました」


160705-0004 例えばお茶会では来客一人ずつにお茶を点てるのではなく、定員20名の前でお点前を披露し、その後お茶を一斉に配り効率を上げています。 「やはり『待ち時間』が発生すると、参加を諦める方が出てこられます。先生にお点前を披露していただく以外の時間は、その場しのぎとしてスタッフがお茶をお出ししています。着物を着ているわけでも作法を披露するわけでもないのですが、それでも少なからず感激してくださっている様子ですよ」


160705-0006 一番好評な体験イベントをたずねてみると、お茶会、書道体験に並んで『折り紙』だとか。 「現場スタッフからの発案を受け、気軽な気持ちで折り紙を置いてみたところ『ワォ!』と好反応だったんです。これは意外な発見でした。それで一緒に折ったり、折ってお見せしたり、完成品を差し上げたりしています。Trip Advisorにいただいた感想を読むと『日本人と会話できて嬉しかった』と。お喋りというコミュニケーションに大きな喜びを感じておられるんだなぁと感じます」