語学力より大切な 「伝えたい」情熱

『SUiTO』が発信しようとしているのは、福岡らしさと感動体験。スタッフは9名からなり、正社員からアルバイト、海外インターン生までさまざま。皆さんそれぞれに第二・第三言語を習得しています。

「と言っても、さほど難しい言語レベルを要求していません。高い習熟度を求めるより面接の際にはこう説明しています。『求めているのは、私と一緒に泣いてくれる人。文化祭のように皆で考え、成し遂げ、一緒に感動しましょう』と」


 指示通りに働くだけの人は求めておらず、オープン当初はスタッフに随分と戸惑われたとか。スタッフは毎月一人一イベントを『SUiTO』で開催することを目指しています。

「イベント事業には、企画や交渉などあらゆる要素が詰まっています。スタッフ一人ひとりがイベント開催を通じて『考動力』を身につけ、自分らしさを発見・発信してくれたら」

 そんな中で唯一、外国語を全く喋れないのが料理長の清水さん。


5 「海外からのお客様に対し、はじめはメモを読み上げていました。しかし『それは違うのでは』との指摘を受けまして。今度は単語を並べ、身振り手振りで表現してみると、思いのほかお客様が喜んでくださったんです。コミュニケーション=言葉だけではないことを、肌で実感しました」

 これまで職人一筋だった清水さんですが、『SUiTO』で新たな自身の強みを発見できた様子です。

 

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SNS投稿の効果は 一朝一夕にはいかない

 『SUiTO』ではWEBを活用し、日々の情報発信に努めています。日頃からもっとも頻繁に更新しているのが、『Facebook』。次いで『Instagram』、『LINE@』。中国語圏向けに『微信(ウェイシン/WeChat)』も駆使し、レジャー体験予約サイト『asoview!』や福岡市公式WEBガイドの『よかなび』にも反響を感じているといいます。

さらに『SUiTO』でイベント体験した人にはトリップアドバイザーへの投稿を呼びかけ、QRコードを配ることでレビュー数が飛躍的に伸びたそう。  


 「とは言え『ネットを見て来ました』という飛び込みのお客様は実感できるほど効果は上がっていません。正直なところ、どれが当たるか分からず、私たちが手入れできる範囲で常に新しい情報を出し続けるしかない」

では、どのような方法で『SUiTO』は売り上げを伸ばしているのでしょうか。答えはとてもシンプルでした。 「人が人を連れて来てくださいます」

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失敗を経て知った 博多商人の心意気

WEBだけでなく、足を使った営業でもオープン以来試行錯誤してきたという七條さん。 「『SUiTO』という場所は、『誰に何を提供しているところなの?』という問いに一言で答えることがとても難しいんです。だからチラシ配布や設置だけでは効果がありませんでした」

 そこで試みたのが、ホテルコンシェルジュや観光案内所のスタッフを招き、実際に『SUiTO』を体験してもらうこと。 「その時は一階でお寿司体験をしていただきました。以来、各ホテルや案内所で『こういう体験ができる所がありますよ』と伝えてくださっているようです」


加えて博多人の気風も、七條さんの追い風になっている様子です。

「ここ福岡では『友人を2人介せば街の全員と繋がれる』と言われています。『SUiTOという場所で、博多の魅力を外の人に伝えようと汗をかいている友人がいる』と一人に伝わると、爆発的に広がるんです。在日留学生の場合は『Facebook』で『いいね』の輪が広がり、ビジネスマンの場合は会議やセミナーの場で話題にしていただけるといった具合に。博多の人の『仲間と思ったらとことん助ける』そんな強力な結びつきに日々驚き、感激しています」

 そんな縁から、インバウンドの最新事情を語るセミナー講師の仕事も七條さんの元へ舞い込むように。外国語が得意なスタッフに翻訳の仕事が持ち込まれることもあります。

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「『SUiTO』館内での営業に加え、BtoBのご依頼にはとても助けていただいています」

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訪日・在日外国人と日本人旅行客、そして地元博多っ子がボーダーレスに集まり楽しい時間を共有できる小さな箱『SUiTO』。ここでの体験を通して、皆が博多を一層好きになる。そんな活動を貫き、いずれは各スタッフがそれぞれ得意分野の専門家として引っ張りだこになり……。七條女将の夢は未来の先まで広がっています。

『SUiTO』は今夏、オープン1周年を迎えました。秋にはキャナルシティ博多内に『キャナルツーリストラウンジ』もオープン。観光案内に加え、日本文化体験メニューも用意しているのは『SUiTO』ならでは。博多の『おもてなし』を担う、重要な存在になっています。

取材を終えて

観光案内所に足りないものは「食」だ!と確信した出会いでした。「食」それもカウンターの中に料理長。外国人観光客との交流が目に浮かびます。また経営方針にも感動し、再訪をお約束しました。(編集長/川北)

取り組みPoint

集客

・近隣ホテル・観光案内所へのチラシ配布
・取材や見学会の積極的受け入れ
・セミナーやMICEへの積極的協力
・FacebookほかSNSでの情報発信

体験

・季節の食文化体験(恵方巻き、おせち料理など)
・季節の日本文化体験(花見、浴衣、餅つき会など)
・九州や福岡を知る体験(博多人形絵付けなど)

シェア

・トリップアドバイザーへのレビューを促すチラシ
・寄せられたレビューに対する迅速な返信
・Facebook『いいね!』の呼びかけ

取材地Data

SUiTO FUKUOKA

住所: 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-2-29
電話:092-724-1055
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