【京都伝統産業ふれあい館】職人との絆とwebを活用【京都府】part1
SNSの書き込みを増やし レビュー数が大幅にアップ
日本人憧れの観光都市から、世界が憧れる国際観光都市へと近年大きく飛躍している京都市。米大手旅行誌『トラベル+レジャー』のランキング『ワールドベストシティ(世界の魅力的な都市)』では、京都市が2年連続で一位を獲得しました(平成26・27年)。この追い風を受け京都市では新たに、戦略的に海外富裕層の誘致を目指す『日本ラグジュアリートラベルアライアンス』を、他の国内6自治体と発足(平成28年)。海外に売り込みたいものはさまざまですが、その一つに、京都の伝統産業があります。
(公財)京都伝統産業交流センターは、伝統産業振興の取り組みをしている京都市の外郭団体。京都市の伝統産業を一望できる博物館『京都伝統産業ふれあい館』の管理運営を市より受託しています。伝統産業は全国的に、長年に渡って国内需要が低迷し続けている実情があります。そのため、活性化のためにかけられる予算は、決して潤沢とは言えません。 「『TripAdvisor』や『Facebook』などのSNSは、PR費用がかけられない中でも宣伝活動に一役買ってくれるツール。やらない手はありません」
そう語るのは『京都伝統産業ふれあい館』の運営を担う(公財)京都伝統産業交流センターの事務局長・土居里枝さん。平成27年4月に着任し、以降SNSを積極的に活用しています。Trip Advisorに寄せられたレビューに返信をするようになったのは着任直後から。書き込まれたレビュー数を見ると、平成27年4月以前では7年間で32件。一方、平成27年4月以降では、わずか1年のあいだに45件。SNSの可能性を、レビューの数の「伸び」が物語ります。SNSをはじめとしたさまざまな取り組みについてうかがってきました。
過去映像から最新情報まで 何でもウェブで広く発信
『京都伝統産業ふれあい館』がオープンしたのは平成8年。展示の方法は時代に合わせ少しずつ移り変わってきました。 「館内に展示している74の京都伝統産業製品にはそれぞれに解説文がついており、これらは平成8年の開館当初から日本語と英語の2言語表示になっています。しかし近年は2言語だけでは十分とは言えないということで、平成27年度にフランス語と中国語(簡体字と繁体字)の解説文も加えました。また西陣織や京友禅などを紹介する映像アーカイブは、以前は館内閲覧用としてVHSテープで保存していましたが、近年はそれをデジタル化し『YouTube』上で公開しています」
『京都伝統産業ふれあい館』は『YouTube』上に専用チャンネルを設け、館の紹介ビデオから、伝統産業製品の製造を紹介する映像まで全24本を誰でも閲覧できる状態にしています。再生回数100回の映像もあれば、1万5000回を超える映像もありました。 「何が当たるか、まったく手探りの状態です。英和・和英辞書を片手に『Facebook』『Trip Advisor』『Instagram』への積極的な書き込みを心がけていますが『何がウケるか、よう分からへんなぁ』と言い合っています(苦笑)。当館では月に一度、舞妓さんをお招きしてのショーを開催しており、そういった舞妓さん関連の投稿は概ね注目していただいているようです」
(公財)京都伝統産業交流センターがSNSの投稿に積極的になったのには、理由がありました。それは『Trip Advisor』が発表した『行ってよかった!無料観光スポット2014』にランキングに入賞したこと(初登場17位)。それまでは『Trip Advisor』対策はまったくの状態だったそうですが、来館者が高評価を書き込んでくれたおかげでランキング入りを果たし、館の注目度が一躍アップ。SNS投稿の可能性を強く意識したそうです(同社のExcellence認証2016を獲得)」。
「現在は『Trip Advisor』へのレビュー書き込みを促す掲示を館内にしています。また寄せていただいた書き込みに対して、迅速に返信するようにつとめています。その一方で、館内の撮影は皆様にご遠慮いただいているのが現状です。なぜかと申しますと、長い年月をかけ育まれた伝統産業製品が、安価な模倣品の脅威にさらされるという考え方もあるためです。皆様に京都の伝統産業を知っていただきたい、しかし写真はNG……、そのあたりに難しさを感じています」。
続きを読む > 伝統産業職人が「自分で売る」態勢に!